価値構造のデザイン

資本主義において、この一世紀ほど「お金」が「価値」の対価として利用されてきました。価値を定量化する資本主義のわかりやすさは大成功(!)そのシンプルさから生まれた消費経済は僕らの生活を豊かにし、平均寿命も大幅に伸びました。デザイナーという職能も例に漏れず、この一世紀のデザインの命題はつねに消費を促進することでした。 そして現在、ほぼ全てのデザインは消費経済のために存在しています。

しかし「お金」と「価値」との等価性が崩壊した現在、私たちは、消費経済が産んだ不合理を強烈に経験しています。どうやら私たち人類は、生き残るために価値に対しての考え方を、文字通り「進化」させる必要に迫られているようです。

そもそも、デザインは消費のためにある、という理解は、社会にとって大変不本意なことです。何故ならデザインとは、生き残るために周囲から価値を作り出す人間の本能的な編集能力に対して、最近その一部を「デザイン」と呼び始めただけのものなのですから。僕はいま求められている「進化」に対して、現在のデザイン領域よりもむしろ、デザイン的思考に見られる強力な編集能力に期待しています。その能力によって、私たちは新しい価値構造を発見できるかもしれません。

ここで思考実験として、プロダクトデザインの流通について考えてみましょう。例えば僕はいまスニーカーを履いていますが、わずか200 年ぐらい前の人間はわらじを履いていました。もちろんスニーカーもデザインですが、わらじだって充分にデザインです。

さて、これら2つのデザインには重大な違いがあることに気づくでしょうか。それは、スニーカーは買う物であり、わらじは作り方を教わる物だということ。言い換えれば、スニーカーを流通させるのが「お金」なら、わらじを流通させるのは「知識(ナリッジ)」だったことです。ここには、プロダクトデザインは「お金」でなく「知識」によって流通できるという重大なヒントが示唆されています。

現在私たちは、知識を介してプロダクトデザインを流通させる、新しい価値構造を持った参加型のWEBサービス、「OPEN SOURCE PRODUCT」を構築しています。

このサービスは、参加するクリエイターがプロダクトの作り方(レシピ)を公開するデータベースとなっています。世界中の人がサスティナブルなデザインのアイデアを交換し、たとえ山奥にいても、周囲の物を利用してプロダクトを自ら製作できるような、自産自消のためのデータベースとなることを目指しています。

このプロジェクトでは、優れたアイデアを持ったクリエイターに開かれたプラットフォームを構築し、新しい価値構造を探る小さな革命を試してみたい。そしていつか、このサービスから世界を救うアイデアを持ったクリエイターが出てきてくれるなら、これほど嬉しいことはありません。

それは、ひょっとしたらあなたかもしれない。
公開予定は2010 年春。「OPENSOURCE PRODUCT」を一緒に作れる日を楽しみにしています。

2010.1.1 代表 NOSIGNER (TOKYO DESIGN FLOW paper No,18より、一部改変)

The Open Source Product Definition - ver 1.0, 2010.03.01

  1. 製造方法が公開されること
  2. 素材の入手が容易であること、持続可能であること
  3. 専門的な製造設備に依存せず、手工業で製作できること(現状、3Dプリンターは誰でもはアクセスできない)
  4. 市販される場合、製作者の権利が保護されること
  5. 広報される場合、製作者のクレジットが表記されること
  6. 派生物に同じライセンスを適用できること
  7. 誹謗中傷差別公序良俗違反しない

また、以下の3つのいずれかに当てはまる製品とする。

  1. 未来に残すべき製品
  2. 現在に影響を与える製品
  3. 過去の伝統を引き継ぐ製品

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